今回は「ATとMT どっちが難しいのか」というテーマでお話していきます。
バイクはATの方が簡単というイメージを持っている方が多いと思うのですが、個人的にはATの方が圧倒的に難しいと思います。
これは僕がMTの方が慣れているから、ATは苦手だからというわけではなく、バイクの特性としてATの方が運転が難しくなる要素が多く存在しているからです。
ではATとMTを比べるとどのような違いがあって、何故ATの方が難しくなるのかについて詳しく解説していきます。
①アクセル
1つ目はアクセルです。
MT車はアクセルを完全に戻しても、クラッチを切ったりニュートラルに入れない限りは、タイヤにエンジンの動力が繋がっている状態が維持されるので、アクセルを回した瞬間に加速することができます。
しかしAT車はアクセルを完全に戻すと、タイヤとエンジンの動力が繋がっていない状態になってしまいます。
そのためAT車はアクセルを完全に戻している状態からアクセルを回すと、エンジンの動力をタイヤに繋げる→加速するといったように1つ動作が増えることになるので、アクセルを回し始めてから加速するまでにタイムラグが発生してしまいます。
タイムラグといってもそこまで大きいものではないので、ある程度の速度で走行していれば何ら問題はないのですが、超低速で走行するような場合は致命的なデメリットとなります。
何故ならタイムラグが発生することによって、加速によるバランス修正が間に合わなくなる可能性があるからです。
例えば自転車で超低速で曲がっている際に、速度を落としすぎてバランスを崩しそうになった場合は、ペダルを漕いで速度を上げると思います。
その際に、ペダルを漕いでもチェーンが外れたようなスカスカの状態で速度が上がらなかったら、一瞬だとしてもビックリしますよね。
AT車は常にそのような状態で走行しないといけないというわけです。
さらにバイクというのは、エンジンの動力がタイヤに繋がっていないと不安定な状態になる乗り物なので、そういった理由からもアクセルをオフにするとエンジンの動力がタイヤに伝わらなくなるというAT車の特性は大きいデメリットになります。
その対処法として、超低速であってもアクセルを完全にオフにせずに軽く回し続けるという方法もあるのですが、それをするためには追加でブレーキ操作が必要になったり繊細なアクセルワークが求められることになります。
しかしMT車であれば、超低速走行は基本操作として身に付くクラッチ操作だけで事足りるシチュエーションが大半なので、アクセルの特性からもAT車の方が難しいと言えます。
②下半身ホールド
2つ目は下半身ホールドです。
バイクというのは低速中速高速どの速度域、シチュエーションにおいても、体と車体の一体感が大切になります。
ただ一体感を高めたいからと、上半身で車体にしがみついてしまうとバイクの動きを邪魔してしまうので、下半身で車体を挟んで一体感を高めることが基本となります。
MT車であれば股下に車体がくるので踵、くるぶし、すね、膝、太ももと、いくらでも車体を挟むことはできるのですが、多くのAT車はMT車と違って跨るというよりはただ座っているだけの状態になるものが多いので、下半身で車体を挟むことができません。
下半身で車体を挟むことができないと様々なデメリットが発生するのですが、全てを挙げ出すとキリがないので1つだけお話すると、低速でのバランスが取りにくくなります。
低速で走行する際はどれだけ運転が上手い人でも、車体が左右にブレてしまいます。
そのブレが大きくならないようにハンドルを細かく動かして修正することがキモになるのですが、下半身で車体をホールドできていないと、ハンドルを動かした反動でさらに車体がブレてしまいます。
その動きを抑えるためにMT車ではニーグリップという膝でタンクを挟むといった行為が必要になるのですが、AT車では下半身で車体を挟むことができないので、ブレを抑えることができません。
なのでAT車はMT車よりも低速でバランスを取るのが難しくなってしまいます。
実際に教習所でもこれが原因で、MT車での一本橋やクランクといった低速走行は得意なのにも関わらず、AT車になった途端全くできなくなるといった方がめちゃくちゃ多いです。
どのデメリットもテクニックでカバーすることはいくらでもできるのですが、MT車であればわざわざそんなことをしなくても下半身でホールドさえしていれば解決できるものが大半です。
なので普通に乗るだけでも身につけないといけないテクニックが多い、そのテクニックを身につけるのが難しいという観点からも、AT車の方が難易度が高いと言えます。
③速度調節の幅
3つ目は速度調節の幅です。
MT車の速度調節は前後ブレーキ・クラッチ・アクセル・エンジンブレーキで行えるのに対して、AT車の速度調節は前後ブレーキ・アクセルのみで行う必要があります。
エンジンブレーキについてはAT車でも使えないわけではないですが、任意のタイミングでシフトダウンすることができないので、速度調節のために利かせているというよりは、勝手に利いているという表現が近いと思います。
なのでAT車はMT車に比べて、ライダー自身が調節できる速度の幅というのがめちゃくちゃ狭くなってしまいます。
加速であれば、MT車ならクラッチを使えば1.1 1.2 1.3 1.4…という風に細かく速度を上げられるのに対して、AT車は1234…みたいな感じで小数点をすっ飛ばした速度の上がり方をしてしまいます。
減速についても先ほどお話したように、AT車は任意のタイミングでシフトダウンをしてエンジンブレーキの利きを細かく調節することができないので、速度調節の幅は狭まってしまいます。
普通に真っ直ぐ走っているだけであれば速度調節の幅が狭くても問題にはならないのですが、低速走行時やカーブを曲がっているときに速度の振り幅が大きくなってしまうのは良くないので、AT車の大きいデメリットとなってしまいます。
これも下半身ホールドと同じようにテクニックを身につければ対処することはできるのですが、MT車であれば応用テクニックを身につけなくても基本操作さえ習得していればできるレベルのものなので、AT車の方が難しいと言える1つの理由になります。
④足つき
4つ目は足つきです。
AT車はとにかく足つきが良いというイメージを持っている方が多いのですが、意外とAT車は足つきの悪いものが多いです。
何故そのような誤解が生じるのかというと、足つきを確認する際にシートの高さしか見ていない人が多いからです。
確かにシートの高さだけを見れば比較的MT車の方が高い傾向にあるのですが、AT車はMT車と違ってシートの幅がめちゃくちゃ広い上にメットインが広い分、車体の幅も広くなっています。
なのでMT車と比べて大股になることから足つきも悪くなってしまいます。
さらにシートの高さが原因で足つきが悪いのであれば、足をつく際に骨盤を動かせばある程度はカバーできるのですが、シートの幅、車体の幅が原因で足つきが悪い場合は、お尻を大きく横に動かさないと足つきを良くすることはできないので、体の動きが大きくなってしまいます。
そうなるといきなり足をつかないといけなくなった場合に対応が遅れてしまったり、お尻を横に動かしたことによってバランスを崩してしまう可能性もあります。
シート高が高くて足つきが悪いのとシートの幅、車体の幅が広くて足つきが悪いのでは、圧倒的に幅が原因で足つきが悪い方が対処しづらいので、足つきに不安のある人に限ってはAT車の方が難易度は高くなってしまいます。
まとめ
以上が「ATとMTどっちが難しいのか」でした。
当然どっちが難しいかは人によって変わってきますが、僕の指導員としての経験上、ATの方が難しいという方が圧倒的に多いです。
教習所でもATじゃなくてMTにしとけば良かったと後悔する方も珍しくないので、バイクの免許取得を検討している方やバイクの購入を検討している方はぜひ参考にしてください。
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